ポリ塩化ビニル
合成皮革には、「ポリウレタン樹脂」が使用されているものと「塩化ビニル樹脂」が使用されているものとに分けられます。ところが、ドライクリーニングを行うと「塩化ビニル樹脂」を用いた合成皮革製品はバリバリに硬くなる特徴があります。
トラブルの多い 塩化ビニル樹脂製品とは
衣服における「塩化ビニル樹脂」の大きな特徴としては、本来の姿である硬い素材を、特殊な薬品を用いてやわらかくし、衣服として着用出来るように変化させているところにあります。
特殊な薬品というのは『可塑剤(かそざい)』と言われる薬品で、この薬品が含まれていないと”硬い”塩化ビニルの衣服になります。
ところが、ドライクリーニングをする際に利用するドライ溶剤はこの可塑剤を溶かし、品物を本来の硬い姿に戻してしまうのです。
つまり、塩化ビニルを使用した衣服は、ドライクリーニングが出来ないのです!
トラブルの原因
ポリ塩化ビニル樹脂製品のトラブル事例は、そのほとんどがドライクリーニングによる硬化(製品が硬くなる)事故と言われています。
「え?けど、ポリ塩化ビニル樹脂はドライクリーニングがNG!なのに、何故クリーニング屋さんはドライクリーニングしてしまうの!?」と疑問に思われた方もいるかと思われます。
ところがこれには、理由があります。
表示ラベルの誤表示
クリーニング綜合研究所が平成15年4月から20年3月までの5年間に、ポリ塩化樹脂使用製品の鑑定依頼30件を調査したところ、24件が「可塑剤」が溶けたことによる硬化事故と発表されています。
そして、24件中22件が「製品の誤表示」が原因という発表がされています。
誤った表示の特徴としては、組成表示が「ポリウレタン」となっているものが多くあることから、衣料品を製造・販売するアパレルメーカーが、”衣服に使用する素材を正確に把握していないこと”や、”ポリ塩化ビニル樹脂がドライクリーニングできないのを知らない”など、一部正しい知識に基づいたうえでメーカーが表示ラベルを付けていない可能性が明らかになっています。
この傾向は、有名海外ブランドにおいても多い事例です。
装飾などにおける表示規定が無いこと
表示ラベルには、衣服の装飾を彩る部分的に取り付けられている「テープ状の生地片」や「ワッペン」「パット」などに使用されている繊維や素材名の表示規定が義務付けられていません。
つまり、衣服を形成する繊維や素材の情報は表示ラベルに表示されていても、装飾などの付属的で細かな部分の情報を一切載せていない衣服が、一部問題無く販売されているのが実態です。
そこで、装飾部に塩化ビニル樹脂が用いられている商品にもかかわらず、塩化ビニル樹脂の使用についての情報が無く、水洗い不可でドライ可の表示がされていれば、ドライクリーニング処理される可能性が高くなり、結果的に、装飾部に硬化等のトラブルを引き起こす原因となります。
外観では判断が困難
ポリ塩化ビニル樹脂を外観で判断することは難しく、ポリウレタンとの区別も困難とされています。
技術の発達によって同じ合成皮革のように見えても、性質は全く異なります。
「ポリウレタン」はドライクリーニング(石油系)が出来ても、「ポリ塩化ビニル」はドライクリーニングは出来ません。
ファッション素材としてのポリ塩化ビニル
2018年の春夏には、クリアな透明感を生かして未来志向やポップな感じを表現できるだけでなく、ナチュラル素材を際立たせる目的でポリ塩化ビニル素材がトレンドとなりました。
「シャネル」のコーディネート。
ヴィトンのモノグラムの素材もポリ塩化ビニル