ウール(WOOL・毛)の特徴
毛(ウール)は羊だけではなくて、動物の毛の総称として呼ばれています。
羊から刈り取った毛を羊毛。(写真:オーストラリア・メリノ種)
それ以外から刈り取った毛を獣毛といって区分されています。(アンゴラ、カシミヤなど)
ウール(毛)は、弾力に優れてシワになりにくく、すぐれた保温性をもっているので暖かく、秋冬物衣料として最適な繊維として、多くの衣類に使われています。
【ウールの特徴】
羊毛の種類は、最高級のメリノ羊毛やブラックフェイス、ドーセット、サウスダウン、チェビオット等約40種類あり、種類や特徴、品質によって4タイプに分類されます。(写真:ブラックフェイス)
一般に羊毛の生地は、梳毛織物と紡毛織物の2つのタイプがあります。
ビジネススーツ等の手触りの硬い、しっかりした梳毛織物(ウーステッド生地)と膨らみがあり、やわらかい手触りの紡毛織物(ウーレン生地)の2つのタイプが製造されています。
梳毛織物 紡毛織物
ウール(毛)は、弾力に優れてシワになりにくいく、空気を多く含んでいるので暖かくウールの表面は、スケールと呼ばれるうろこ状ものが無数にあります。
ウールの温かさはスケールの隙間に多くの空気を含んで断熱していることに因りますので、スケールの間に汚れが溜まって空気が少なくなると保温性は低下します。
汚れが軽いうちに洗ってきれいにして着るのが、ウールを暖かく着るコツです。
ウール(毛)の側面
ウール(毛)の断面
水に濡れるとスケールが開き、もみ作用によってスケールが絡み合い収縮し、硬くなります。
これをフェルト化といいます。
特にフェルト化は、紡毛生地に発生しやすく、梳毛生地にはあまり発生しません。
(ウールのフェルト化の図)
乾燥状態…スケールは閉じた状態で、もみ作用が加わっても絡みにくい
水に濡れた状態…スケールが開いて、絡みやすくなる
近年では、ウール(毛)素材で水洗いができるウオッシュブル加工の衣類が販売されています。
これらのウール(毛)欠点を補うためスケールを除去したり、樹脂でスケールが開かないように加工したモノで、水で洗ってもスケールが絡まず、縮みなどは発生しません。
ただ、スケールが湿度の変化によって開閉することで温度調節ができ、ウールならではの手触り感もスケールに依るところが大きいため、スケールを樹脂で加工したウールは、元のウールとはかなり性質が変化しています。
フェルト収縮以外にも、水分が影響したことにより生じる収縮には、繊維が水分を吸って膨潤し太くなり、乾いた後も変形した組織が元に戻らない「膨潤収縮」や、製造工程で張力が加わって生じた残留ひずみが水分を受けて原形に戻ることによって生じる「緩和収縮」があります。
スーツを仕立てる時に、水に入れたり蒸気を当てて縮絨してから裁断するのは、この、「膨潤収縮」や「緩和収縮」を避けるためです。
また、ウォータークリーニングでは、クラスタルウォーターで洗うことによってこれらの収縮を軽減するとともに、ネットで衣服を固定して洗うことで、芯地などの内包物の位置がズレないようにしています。
一口にウールといっても糸の細さや、織り方、編み方によって性質は大きく変わってきます。
ちなみにスーツやコートによく付いている、スーパー〇〇'sという表示は、糸の細さではなくて、糸を構成する繊維自体の細さを表す数字で、同じ数字でも、糸を作るために撚られた繊維の数によって糸の太さは様々なため、生地の厚みも異なります。スーパー100は18.5ミクロン、スーパー200は13.5ミクロンの繊維が使われています。