革のきほん
【エイジング】
天然素材である革は、長年使い込むことによってさまざまな変化を見せます。例えば色が濃くなってきたり、表面に光沢が出たり(反対に光沢感が落ち着いたり)、馴染んで柔らかくなったり、形が変わってきたり・・・。こうした革の経年変化を「エイジング(Aging)」といい、「味出し」とも呼ばれます。エイジングは革好きにとって、大きな魅力です。
ただし、エイジングはどの革にも同様に起こる現象ではありません。一般的にクローム鞣しの革には色の変化が起こりにくく、ヌメ革のようなタンニン鞣しの革でははっきりとエイジングが見られ、いわゆる“あめ色の革”は、ほとんどが深くエイジングしたタンニン鞣し革です。また、オイルを大量に含んだ革はエイジングしやすくなり、比較的短期間でいい味わいになります。
【銀面】
革の材料である原皮は大きく分けると2層構造になっています。一番表側にある薄い層を「表皮層」、その下にあるコラーゲン線維でできた層を「真皮層」といいます。私たちが普段、目にしている革は、この真皮層を鞣したものです。真皮層はさらに2層に分かれ、そのうち表皮のすぐ下にある最も外側にある層を「銀層(ぎんそう)」または単に「銀」と呼びます。革は基本的に、この銀層と、その下にある網状組織の分厚い層からできています。
この銀層がついている状態の革を「銀付き革」、その表面を「銀面」といいます。銀面は動物の種類や鞣し方、加工方法によって多様に変化するので、銀付き革の表情は千差万別。あえて銀面を除いて仕立てられる革もあります。馬の臀部の革を削り出してつくるコードバンは、その代表格です。
【合成皮革と人工皮革】
一般的に天然皮革に似せた人工素材を広く「合皮」と呼びますが、厳密には「合成皮革」と「人工皮革」があります。合成皮革は生地のベースにポリウレタンなどをコーティングし、見た目だけを革に模したもの。一方、人工皮革は不織布にポリウレタン加工を施し、より革に近い構造に仕立てたものです。こちらは軽くて摩擦に強く、弾力性・通気性・柔軟性に富むのが特徴です。
どちらも革と比べると製造・加工が容易であり、品質が均一で面積の広いものをつくることができるので、安価に大量生産できるのが利点です。また革よりも化学的に安定しているため水にも強く、スポーツや野外で使用するものにもより向いています。しかし、長年使用しても色艶が変わらないため、味わいのある経年変化を見せることはほとんどありません。
【床面】
革の両面のうち、体表側を銀面というのに対し、肉側を「床面(とこめん)」または「床(とこ)」といいます。つまり、皮膚の表面が銀面で裏側が床面です。床面側には革の線維が見えていることが多く、磨きなどの仕上げがされていないものでは、大きく毛羽立っていることもあります。内装のないアイテムは、床面の仕上げにも職人のこだわりが現れます。
普通の皮革素材では銀面側が表面として使われるので、床面といえば、大抵は革の裏側を指します。ところが起毛革のスウェードやベロアなどは、床面を表面として仕上げるため、革の裏側が銀面になることに。また、馬の臀部から仕立てるコードバンも、革の床面側を磨いてツルツルに仕上げるので、皮膚の裏側が表面に使われています。