先日の「テーラードプレッシング研究会」の中でもハイブランドの商品がなぜ高いのか?
について説明がありましたが、とってもわかりやすくまとめてあるサイトがありましたので、今回はこちらを引用して勉強したいと思います。
「たかがTシャツに50000円とか詐欺じゃん!」って思いますよね。
今回はその秘密、、ハイブランドのTシャツはなぜ高いのかをひも解いていきましょう。
そもそもハイブランドってなに?
明確な定義はないようですが、世の中にはハイブランドと呼ばれているブランドがあります。
ルイ・ヴィトン、エルメス、シャネルなどですね。
店舗は高級で、一般人が近寄り難いオーラをプンプン放っています。
いずれも超がつく程の高価格帯であり、世にある多くのブランドと一線を画します。
いくら検索してみてもハイブランドの定義はいっかな定まりません。
HIGH BRANDを直訳してみたり、ブランドの雰囲気から答を見出そうとしたり。
そこでここでは、1つの『ハイブランドに対する定義づけ』をしてみようと思います。
洋服の値段ってどこで決まるの?
3つに分けて見ていきましょう。
- デザイン、素材、流通
- ブランドのネームバリュー
- 芸術性
①デザイン、素材、流通
これは最もわかりやすいところです。
同じTシャツでも、
●「毛羽立ちやすい安価なコットン製、よく見るプレーンなかたち、無造作なロゴ」
■「表面にツヤのあるコットン、前後の身頃(洋服の前面・後面の部分)に着丈差がある、デザインに意味があるロゴ」
これでは全然違います。
- 片や大量生産品で、既に世の中に広く流通している安価な生地を使ったもの。
- 片やパーツごとに細かいデザインが入り、素材を厳選して使ったもの。
デザインが入る程パーツが細かくなり、パーツが増える程工賃が増します。
考えてみたらあたりまえですよね、それだけ作業数が増えるからです。
素材にこだわればさらに値段は上がります。
テキスタイルメーカー、縫製工場、検品出荷、卸し先のマージン(定価から卸値を引いた金額)。
洋服は一人では作ることはできません!
様々な人が関わって、そして関わる人が多い程に定価に反映されます。
ハイブランドのモノ作りは、高級品であるだけにこだわって作られています。
ですが、全てのハイブランドの縫製や素材が超一流品かと言えば、そうでもありません。
縫製・素材に関してはドメスティックブランドの方がずっと優れている部分もあるのです。(例えばルイ・ヴィトンのように縫製・素材共に、他に有無を言わせないハイブランドも当然ありますが)
デザインと素材は確かに値段に反映される部分ではありますが、Tシャツが50000円する理由はこれだけでは語れないというのが事実です。
②ブランドのネームバリュー
いわゆる「ブランディング」の計画の一環として、金額で他のブランドと差別化します。
これは、なるたけ低価格を実現して消費者に手に取ってもらおうというモノ作りとは全く別のものですね。
ドメスティックブランドにはあまり見られないものです。
「これだけやってこの値段は安いんですよ!」ではなく、
「これだけやっているからこその値段です」という。
値段の高さっていう目に見える単純な”数値”によって、「私たちのモノ作りはスペシャルなものです」と消費者に伝えているわけです。
また、ハイブランドには卸しをしないブランドがあります。
これがどういうことかと言うと、セレクトショップ等に洋服を卸さないというもの。
セレクトショップはたくさんのブランドの洋服が集まったお店。
販売員は当然ハイブランドの社員ではない。
するとどういうことが起こりうるでしょうか?
洋服の良さをちゃんとお客様に伝えてもらえないかもしれない。
他ブランドの洋服と一緒にマネキンに飾られて、洋服のイメージを崩されるかもしれない。
福袋に放り込まれるかもしれない。
……これらの不安要素を排除する為ブランドイメージを守る為に、直営の店舗で、自社の社員にしか販売をさせないんですね。これもブランディングの一つです。
決して「俺達はすげーんだぞ」とふんぞり返っているわけじゃないんです。
プライドを持って世界最先端のデザインを盛り込んだ洋服を、正しく評価してもらう為の戦略なのです。
たぶんこの点で「ハイブランドってネームバリューのせいでお高いんでしょ?」と多くの人に誤解されている気がします。
私も昔は安直にそう思っていました…
値段の桁が違うのは、ブランドの価値を一定水準に保つ為。
ちゃんと理由があったのですね。
さて、ここで1つ疑問に思われるかもしれません。
①にあった通り、洋服の値段には”流通”も含まれています。
しかし②では、卸しをしないハイブランドがあることに触れました。
卸しをしないということはどういうことですか?
セレクトショップ等の販売代理店に支払うマージンはなくなりますよね。
なら、普通に考えれば、値段は下がるはずです。
これはSPA(製造小売業)と同様、マージンその他の経費をカットすることで、高級品を手頃な値段で売りだす販売モデルと一見同じに映ります。
ですが、ハイブランドのTシャツは4000円じゃ買えません。
コストは下がっているはずなのに、ブランディング戦略というだけで値段を跳ね上げるの?
他になにか理由があるの?
その答が③にあります。
③芸術性
同じTシャツでも50000円の値がつく、その大きな要因を占めるもの。
ハイブランドのデザインが持っているもの。
それが”芸術的価値“です。
Tシャツはパターンがシンプルなので差別化し難いですが、例えば冬物のコートだったり、ドレスだったり、セットアップだったりは、世の多くのブランドと比べてもそのデザインの特異さがよくわかるはずです。
パリコレ等の世界が注目するコレクションショーで発表され、その後世界のトレンドを左右し得るデザインです。
消費者はその”デザインが持つ芸術性”に対してお金を払います。
日本人の私たちには少し理解が難しいかもですね。
では洋服を絵画に置き換えてみましょう。
キャンバスに絵の具で描いた1枚の絵に、値段の違いがあるのはどうしてですか?
美大生が描いた絵と、ゴッホが描いた絵は同じ値段でしょうか?
4000円では買えないですよね?
これが、芸術にお金を払うということ。
ハイブランドのデザインには、他では手に入れることができない”トレンドの源流としてのデザイン”と、”唯一無二の芸術性”があるのです。
そこには、”本物”だけが持つ美しさ、時代を正確に読み取る目、歴史に裏打ちされた確たる理由が存在します。
ハイブランドのTシャツが50,000円する理由
まとめです。
ハイブランドのTシャツは私たちの周りにあるそれとなにが違うのか?
- デザインの細やかさ
- 選び抜かれた素材
- 徹底したブランディング
- 芸術(デザイン)に対してお金を払う価値がある
つまり、これらを満たしているブランドは少なくともハイブランドと呼ぶに値するブランドだということですね。
今なら、50000円のTシャツを見る目が変わっていることでしょう。
どんなところが他と違うのか、購入する必要はありません。
まずは店舗に入って、手に取るだけ手に取ってじっくり眺めて試着してみて下さい。
ファッションの新しい楽しみがあなたを待っているかもしれません!!
スーツに関して言えば
Tシャツとは違って、使用する生地にも幅があり
パーツも桁違いに多く
裁断、縫製、仕上げと工程が多いため
価格に反映される部分がより複雑になりますが
基本は今回紹介した内容のとおりだと思います。
次回の「テーラードプレッシング研究会」では
テーラーでオーダーして仕上げたスーツと既製品のスーツを用意し
実際に解体して、作られ方やパーツの違いなど
内部の構造を確かめてみるという勉強会になる予定です。
開催は、10月15日(木曜日)です。