「カビによる・・」8/11(日)
1967年製 UK支給品ブッシュジャケット:VINTAGE
レトロなサファリジャケットをピスポークテーラーのM様より
お預かりしました。その見解書です。
M様
お送り頂きましたサファリジャケットは、
特に目立つ汚れは見当たりませんでしたが、
検品時に両袖口の近くや身頃の裾まわり等に、
薄い青緑色の薄く小さな点々がありました。
よくよく検品しないと普通はわからないと
思います。
これは、カビによる色抜けで、
カビの胞子が生地に根を張って、
その部分の染色を冒すことにより色が抜けた
状態になっているものです。
このサファリジャケットの場合は、
カビによって赤系の色素が分解されたために、
元色から赤系の色が消失して
薄い青緑になったと思われます。
参考になればと思い
少しカビについての
情報をお伝えしておきます。
カビの胞子は
空気中にどこにでも存在しますから、
衣類にはいつでもいくつかの胞子が付いています。
温度と湿度とカビの栄養という
3つの条件が整うとそのカビが繁殖して
目に見える状態になり、
「カビが生えた」ということになります。
温度と湿度が高い状態で保管されると
カビが生えやすいですし、
また、汚れや汗などが衣類に残っていると、
それを栄養としてカビが繁殖します。
湿気を吸いやすい厚手の生地などは、
特に生地の内部にカビが発生して、
見た目はカビが無いけれど
カビの臭いがする事があります。
また、
綿のトレンチコートなどは、
乾いている時はカビは目立ちませんが、
水に濡れると全体に点々と、
はっきりとカビが現れることがあります。
これは
カビの胞子が根を張った部分が、
生地の表面の撥水性が失われて、
周囲よりも水を良く吸い込み、
点々と色が濃くなった状態です。
レザーなどは
それ自体がカビの栄養源になりますから、
温度や湿度が高いと
すぐにカビが生えてきます。
カビが生えるのを防ぐには、
洋服を着て、
カビの胞子を落とすのが一番ですが、
保管する場合には、
汗や汚れを取っておくことと、
除湿剤で湿気を減らし、
定期的に取り出してカビを
チェックします。
ちなみに、
カビは気温20度以上、湿度70%以上、
ホコリなどの栄養素が豊富にある
環境下で活発に繁殖活動を行うと言われています。
実は、閉め切ったクローゼットや押し入れは
空気がこもってしまうので、高温多湿になりやすい
場所なのです。
また、部屋や水回りに比べて
掃除をする頻度が低いので、
カビの栄養素となるホコリも溜まりがちなので、
カビが生える最適な環境ということになって
しまいます。
私のレザーや衣類のクローゼットルームは、
エアコンを常に湿度50%、温度18度に設定し、
また、抗菌消臭剤を定期的に噴霧して
カビが生えにくい環境を作っています。
また、弊社の100坪の「安心クローゼットルーム」も
以上の内容と同じような状態で
お客様の大切な衣類を一年間お預かりしていますので、
衣類やファーやレザーアイテムで
過去、カビの被害にあった事例はありません。
カビには白カビと黒カビの二種類のカビ
がありますが、
白いカビが表面に薄く生え始めた程度だと、
表面を払って取る事ができますが、
白カビでも根を張ってしまうと、
色抜けしたり、臭いが残ってしまう為、
早期の発見が重要です。
これが黒カビになると、
衣類の繊維奥まで根を張ってはる場合が多いので、
白カビに比べると落とすのがとても大変で、
多くのクリーニング店は黒カビの除去を断ります。
さて、
今回のサファリジャケットの
ウォータークリーニングの作業工程です。
まず、
シリコーン溶剤による手洗いを行ないました。
50年を経たジャケットですが、
見たところは特に劣化しているところは無いようです。
ただ、
レザーなどの天然素材も同様なのですが、
年代を経た物は、全体の状態が均一ではなくて、
部分的に劣化が進んでいることがよくありますので、
最もデリケートな洗い方を行ないました。
また、
シリコーン溶剤は大気中の汚れなどの
表面の油性の汚れを取りながら、
生地を薄くコーティングして繊維の滑りを良くし、
次に水で洗う時に、型崩れを防ぎ、
水が浸透しすぎないように調節する
働きがあります。
次に弊社独自開発の
クラスタルウォーターでの手洗いを行ないましたが、
この時は、厚みのあるネットに巻いて、
中性洗剤で手で押し洗いを行ない、
抗菌剤も用いてカビを除去しました。
すすいだ後は、
柔軟剤と糊剤で手触り感と張り感を調整してあり、
洗い後は、人体整形乾燥機で整形乾燥しました。
カビにより
点々と色抜けしていた部分は、洗い後、
最初の状態よりも点々が大きくなっています。
これは、
色が抜けていた部分の周囲もカビによって染色が冒され、
生地との定着が弱くなっていたものが、
洗う事で取れて目立ってきたもので、
カビの場合にはよく起こります。
この色抜けは、
元色から抜けて行った
赤系の色をひとつひとつの点々に
足していく染色補正することで
分らなくすることができますが、
細かい点々とした色抜けが数多く
ありますので、
とても手間のかかる作業となります。
従って、
少しばかりお時間を頂いて、
染色補正によって元の状態により近づける
復元作業を行っていきます。
作業内容としては、
5mmの白化箇所が100個以上はあります。
この白化箇所を一個染色補正するのに
およそ手作業で約20分ぐらいかかります。
スプレーガンで全体吹き付けを行えば
コストは安く済みますが、
あのレトロ感はなくなります。
従って、
やはり費用はかかっても
一個一個手作業での染色補正での全体復元が
好ましいと思われます。
ただ、費用と期間は少しばかりかかると
思われますので、作業実験をして
あらためて正式なお見積りと納期をお知らせ
できればと思います。
どうぞ宜しくお願い致します。
中田輝道
午前中にお客様に送った見解書です。
カビ被害多いいです。
今日もカビ除去コート、スーツ盛りだくさんです。
中田輝道様
こんにちは。
お世話になっております。
この度は懇切丁寧に御説明を頂まして、
誠に有難う御座います。
とても良く理解でき、かつ大変勉強になりました。
畑が違えばそれぞれの知識や技術があり、
改めて御社の洗う事に対するレベルの高さや
手間暇の掛け方に驚くばかりです。
今回のJKは私の私物であり、
当店商品開発用サンプル兼 自身着用分として最
近購入したものです。
御社に出させて頂き良かったです。
改めてご連絡をお待ちしておりますので、
何卒宜しくお願い致します。
有難う御座いました。
M
※今日は葬式でしたが副住職が勤めてくれました。
こういったスーツやコートのカビ処理が多いいです。
伊東さん、朝の7時から午後12時まで品物入力助かり
ました。主力メンバーに加えてこうやってサポーして
くれる人たちのお陰で、どうやらこうやらお盆を迎えそ
うです。ありがとう。
それにしてもいつも思うことですが、日祭日なんて関係なく
問い合わせや、即時対応する案件が多く、これで休み
なんて取っていたらとんでもない状態になると思います。
というか、今日も考えられないようなイレギュラーなことが
ありました。
こういったことがあるので、
なかなか・・・お寺に帰られない大きな理由の一つです。
さて、明日一日頑張って、明後日の13日〜15日まで
お盆休みをいただきます。私は明後日13日の朝一で
広島のお寺に帰ります。
レトロなサファリジャケットをピスポークテーラーのM様より
お預かりしました。その見解書です。
M様
お送り頂きましたサファリジャケットは、
特に目立つ汚れは見当たりませんでしたが、
検品時に両袖口の近くや身頃の裾まわり等に、
薄い青緑色の薄く小さな点々がありました。
よくよく検品しないと普通はわからないと
思います。
これは、カビによる色抜けで、
カビの胞子が生地に根を張って、
その部分の染色を冒すことにより色が抜けた
状態になっているものです。
このサファリジャケットの場合は、
カビによって赤系の色素が分解されたために、
元色から赤系の色が消失して
薄い青緑になったと思われます。
参考になればと思い
少しカビについての
情報をお伝えしておきます。
カビの胞子は
空気中にどこにでも存在しますから、
衣類にはいつでもいくつかの胞子が付いています。
温度と湿度とカビの栄養という
3つの条件が整うとそのカビが繁殖して
目に見える状態になり、
「カビが生えた」ということになります。
温度と湿度が高い状態で保管されると
カビが生えやすいですし、
また、汚れや汗などが衣類に残っていると、
それを栄養としてカビが繁殖します。
湿気を吸いやすい厚手の生地などは、
特に生地の内部にカビが発生して、
見た目はカビが無いけれど
カビの臭いがする事があります。
また、
綿のトレンチコートなどは、
乾いている時はカビは目立ちませんが、
水に濡れると全体に点々と、
はっきりとカビが現れることがあります。
これは
カビの胞子が根を張った部分が、
生地の表面の撥水性が失われて、
周囲よりも水を良く吸い込み、
点々と色が濃くなった状態です。
レザーなどは
それ自体がカビの栄養源になりますから、
温度や湿度が高いと
すぐにカビが生えてきます。
カビが生えるのを防ぐには、
洋服を着て、
カビの胞子を落とすのが一番ですが、
保管する場合には、
汗や汚れを取っておくことと、
除湿剤で湿気を減らし、
定期的に取り出してカビを
チェックします。
ちなみに、
カビは気温20度以上、湿度70%以上、
ホコリなどの栄養素が豊富にある
環境下で活発に繁殖活動を行うと言われています。
実は、閉め切ったクローゼットや押し入れは
空気がこもってしまうので、高温多湿になりやすい
場所なのです。
また、部屋や水回りに比べて
掃除をする頻度が低いので、
カビの栄養素となるホコリも溜まりがちなので、
カビが生える最適な環境ということになって
しまいます。
私のレザーや衣類のクローゼットルームは、
エアコンを常に湿度50%、温度18度に設定し、
また、抗菌消臭剤を定期的に噴霧して
カビが生えにくい環境を作っています。
また、弊社の100坪の「安心クローゼットルーム」も
以上の内容と同じような状態で
お客様の大切な衣類を一年間お預かりしていますので、
衣類やファーやレザーアイテムで
過去、カビの被害にあった事例はありません。
カビには白カビと黒カビの二種類のカビ
がありますが、
白いカビが表面に薄く生え始めた程度だと、
表面を払って取る事ができますが、
白カビでも根を張ってしまうと、
色抜けしたり、臭いが残ってしまう為、
早期の発見が重要です。
これが黒カビになると、
衣類の繊維奥まで根を張ってはる場合が多いので、
白カビに比べると落とすのがとても大変で、
多くのクリーニング店は黒カビの除去を断ります。
さて、
今回のサファリジャケットの
ウォータークリーニングの作業工程です。
まず、
シリコーン溶剤による手洗いを行ないました。
50年を経たジャケットですが、
見たところは特に劣化しているところは無いようです。
ただ、
レザーなどの天然素材も同様なのですが、
年代を経た物は、全体の状態が均一ではなくて、
部分的に劣化が進んでいることがよくありますので、
最もデリケートな洗い方を行ないました。
また、
シリコーン溶剤は大気中の汚れなどの
表面の油性の汚れを取りながら、
生地を薄くコーティングして繊維の滑りを良くし、
次に水で洗う時に、型崩れを防ぎ、
水が浸透しすぎないように調節する
働きがあります。
次に弊社独自開発の
クラスタルウォーターでの手洗いを行ないましたが、
この時は、厚みのあるネットに巻いて、
中性洗剤で手で押し洗いを行ない、
抗菌剤も用いてカビを除去しました。
すすいだ後は、
柔軟剤と糊剤で手触り感と張り感を調整してあり、
洗い後は、人体整形乾燥機で整形乾燥しました。
カビにより
点々と色抜けしていた部分は、洗い後、
最初の状態よりも点々が大きくなっています。
これは、
色が抜けていた部分の周囲もカビによって染色が冒され、
生地との定着が弱くなっていたものが、
洗う事で取れて目立ってきたもので、
カビの場合にはよく起こります。
この色抜けは、
元色から抜けて行った
赤系の色をひとつひとつの点々に
足していく染色補正することで
分らなくすることができますが、
細かい点々とした色抜けが数多く
ありますので、
とても手間のかかる作業となります。
従って、
少しばかりお時間を頂いて、
染色補正によって元の状態により近づける
復元作業を行っていきます。
作業内容としては、
5mmの白化箇所が100個以上はあります。
この白化箇所を一個染色補正するのに
およそ手作業で約20分ぐらいかかります。
スプレーガンで全体吹き付けを行えば
コストは安く済みますが、
あのレトロ感はなくなります。
従って、
やはり費用はかかっても
一個一個手作業での染色補正での全体復元が
好ましいと思われます。
ただ、費用と期間は少しばかりかかると
思われますので、作業実験をして
あらためて正式なお見積りと納期をお知らせ
できればと思います。
どうぞ宜しくお願い致します。
中田輝道
午前中にお客様に送った見解書です。
カビ被害多いいです。
今日もカビ除去コート、スーツ盛りだくさんです。
中田輝道様
こんにちは。
お世話になっております。
この度は懇切丁寧に御説明を頂まして、
誠に有難う御座います。
とても良く理解でき、かつ大変勉強になりました。
畑が違えばそれぞれの知識や技術があり、
改めて御社の洗う事に対するレベルの高さや
手間暇の掛け方に驚くばかりです。
今回のJKは私の私物であり、
当店商品開発用サンプル兼 自身着用分として最
近購入したものです。
御社に出させて頂き良かったです。
改めてご連絡をお待ちしておりますので、
何卒宜しくお願い致します。
有難う御座いました。
M
※今日は葬式でしたが副住職が勤めてくれました。
こういったスーツやコートのカビ処理が多いいです。
伊東さん、朝の7時から午後12時まで品物入力助かり
ました。主力メンバーに加えてこうやってサポーして
くれる人たちのお陰で、どうやらこうやらお盆を迎えそ
うです。ありがとう。
それにしてもいつも思うことですが、日祭日なんて関係なく
問い合わせや、即時対応する案件が多く、これで休み
なんて取っていたらとんでもない状態になると思います。
というか、今日も考えられないようなイレギュラーなことが
ありました。
こういったことがあるので、
なかなか・・・お寺に帰られない大きな理由の一つです。
さて、明日一日頑張って、明後日の13日〜15日まで
お盆休みをいただきます。私は明後日13日の朝一で
広島のお寺に帰ります。
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