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「タキシードのウォータークリーニング 」6/8(月)
今勢いのある某クリーニング会社の取締役さんと社員さんのスーツを
二着ウォータークリーニングしました。ウォータークリーニング後は、社
員全員でそのスーツの仕上がりを是非共有体感したいということです。
そして先週の週末にスーツ二着を仕上げて某社に発送しました。


o様

今回はスーツとタキシードを水洗いさせていただきましたが、仕上がり
はいかがでしたでしょうか。
袖を通していただければ、ドライクリーニングとの着心地の違いを実感
していただけると思います。

中田の方より今回のおおまかな作業工程等についてお伝えしておくよ
うにとのことでしたので、以下、今回お預かりしましたスーツとタキシード
をどのような点に留意しながらウォタークリーニングやプレスを行ったか
について、工程に沿ってご説明いたします。

また、着心地やプレス等お気付きや不具合の点がおありでしたら、何で
もお知らせ下さい。すぐに対応いたしますので。


まず、
1.スーツ、タキシード共に、入荷後は全体のシルエットや型崩れ、シ
ミ、汚れやキズ、ヤブレ、変色、そしてポケットの中などをチェックしなが
ら採寸し念入りにカルテを作成します。


2.それから、表と裏のポケット口や裾周りの裏地のキセの部分、そし
て袖口、垂れ綿等にしつけをおこないますが、これは、水で洗う最中と、
その後の人体整形乾燥機で乾燥する際に、ポケット口が開いたり、表地
と裏地や副素材の位置関係がずれて、型崩れするのを防ぐためです。


3.次に、上着の襟や脇など汗や皮脂汚れの付きやすい部分と、黄ば
みの発生しやいパンツのシック部分を、スポッターで中性洗剤と水で染み
込んだ汚れを先に落としておきます。


4.そして、最初はシリコーンドライで洗い、全体の油性の汚れを取り
ますが、このシリコーンで先に洗うことで、次に水洗いした後の生地に艶
感やしなやかさが残ります。

洗いにおいての油性の汚れと水溶性の汚れの除去や、洗い上がりの張
り感や艶感、手触りの滑らかさ、そして臭いなどについては、色々と試行
錯誤を重ねてきました。

水そのものの開発はもちろん、石油系ドライと水洗いとの組み合わせ、シ
リコーンドライと水との組み合わせ、石油とシリコーンと水洗いとの組み合
わせなどを何度も試しました。

また、シリコーンと水洗いをどちらを先にするかによっても生地の質感が
まったく変わりますので、水洗いのさっぱり感とシリコーンドライのしっとり
感をどちらを優先させて出していくかも素材別に色々と試し、今はスーツ
の多くではシリコーンを先に、水洗いを後にという順番になっています。


5.次に水洗いですが、弊社の水は普通の水と違って繊維等の洗いに
一番適した特殊水「クラスタルウォーター」を使用しています。この「クラス
タルウォーター」と「マイクロナノバブル」のほぼ静止状態でスーツの内包
物を崩さないように水洗いを行います。

この時は、肉厚のネットに上着やパンツをゆるめに畳んで挟みます。今回
使用した洗剤(素材や目的によって変える)はランドレスのシグネチャー・デ
タージェントです。この洗剤は色の保護剤も含んで衣類にとても優しく、心
地よいクラシカルな香りも特徴です。
  
洗う工程は、まず、ドラムに水を溜めて微細な泡を発生させ、その中でネ
ットにくるまれたスーツが水浴している感じです。そして、20秒に一度、
一回転だけドラムを回す緩やかな動きで、衣類へのダメージを最小限に
洗い上げます。

洗いからすすぎ、脱水までの全工程で、スーツの場合は5分の短時間コ
ースですが、最初にスポッターで汚れを落とし、次にシリコーンドライで油
性の汚れを落としてからの水洗いですので、これで残りの水溶性の汚れ
がしっかり取れて生地を傷めずとてもきれいになっています。


6.洗い後、ネットから取り出すと、これだけ緩やかな工程で洗ってい
ても、脱水時のシワはありますし、いくらかの型崩れも起こっています。
これを乾かしながら整形していくのが人体整形乾燥機で、肩幅や胸の
厚みを調整して機械にセットし、スチームと温風で整形乾燥していきます。
と同時に表と裏に消臭抗菌剤を噴霧したり、素材に応じた加工剤を噴
霧して「艶」や「ハリ」や「潤い」等をもたせていきます。

整形に関してはこの時、細かい部分はハンドアイロンを使って修正して
いきますが、今回のタキシードはラペルの芯地に少し凹凸感がありまし
たし、拝絹はアイロンを当てると大変当たりが出やすい生地なので、乾
いたときにシワが残らないように、濡れている段階から、スチームで出
来るだけ伸ばしておきます。

通常ですと、タキシードを水洗いする際は、仕上げの手間がとてもかか
るため、この拝絹だけは濡らさないように、カバーして洗うのですが、全
てを洗って体験していただこうということで、全体を丸洗いしました。

また、このタキシードの生地は、水に濡れると全体に細かな凹凸ができ
て生地が荒れた感じになりやすいですので、この生地感も人体整形機
にかける時間を長くし、ハンドアイロンと組み合わせることで、艶や張り
を戻しています。

芯地の厚い部分がほぼ乾いたら人体整形機から外し、裏から、アイロ
ンで、裏地の深いシワを取り、芯地の凹凸も滑らかにしておきます。完
全に乾いてからではなく、この段階で修正しておくことで、後からの仕上
げをやりやすくしています。それから、立体乾燥機で完全に乾燥します。

そして、パンツは、通常ですと、水洗い後は、パンツトッパーという、パン
ツ用の整形乾燥機にかけて、テンションをかけて軽く引っ張りながら、ス
チームと温風で膨らませてシワを取り整形します。

ただ、このタキシードは両脇に側章があり、パンツトッパーにかけると、
側章とウール生地の伸縮率の違いが出て側章部分にシワがはいりや
すいため、パンツトッパーにはかけずに、そのままハンガーに吊るして
乾燥しました。


7.乾燥が終わると仕上げですが、上着は、まず、袖裏から身頃、背
中と、裏からアイロンで裏地を伸ばしながら、シームの縮みがあれば修
正し、芯地や垂れ綿、ポケットの袋地などもきれいに伸ばしながら、表
地と芯地と裏地を正規の位置に合わせ一体化させていきます。

これが、次に機械でプレスする時の下ごしらえになり、表地と芯地が正
しい位置で合わさって平滑な状態になっていないと、機械でプレスして
も立体的なシルエットがすぐに崩れてしまいますし、細かな凹凸が当た
りとなって表地に現れます。


8.それから袖を形作ります。
袖はハンガーに吊るした時に真横に開くのではなく、少し前向きに湾
曲していく方が美しいのですが、水洗いすると、生地につけてあった癖が
取れ、袖付けのシームのプレスも緩むため袖の向きが開いてしまいます。

特に、タキシードではない方のoさんのスーツの上着のように、袖付けの
縫い方がビルドアップしてなくてシャツに近いようなものは、袖が脇に沿
った状態よりも、脇から少し離れた状態の方が袖が真下にすっと下りる
ため、ハンガーに吊るすと不自然な感じになります。最近の若い人のス
ツの袖付はこのようなケースが多く、水洗いすると「オーノー」状態に開い
てしまいます

これを、人の袖の形に合わせて少し前向きにするために、袖付けのシ
ームをプレスして形作り、袖自体も内側のシームより前側をしっかりと
くせ取りをして形をつけていきます(このようなプレス技術は月に一度、
黄綬褒章受賞者・一級技能士であるベテランテーラーの鈴木誠二さん
よりご指導を受けています)。


9.次に前身頃専用のプレス機で身頃を立体的にプレスします。こ
のプレスで、胸のふくらみとウエストのくびれや、前立てのエッジから
裾にかけてのシャープなラインを作り出します。

それから、肩専用のプレス機で、人の体に合わせて少し前にカーブし
た型のラインを作り、後ろ襟やラペルも専用のプレス機とハンドアイロ
ンで、首に沿って立ち上がる衿と、ラペルのロールを現わします。

ただし、タキシードの拝絹は、非常に当たりが出やすいためプレス機
によるプレスはできませんし、アイロンも表からは当てられませんので、
裏側から小さなアイロンで蒸気を当てては冷ましながら生地に張り感
と艶を出して行きました。

当たりがゼロとはいきませんが、この素材にしてはきれいに仕上がっ
ていると思います。


10.それから、裏地専用のプレス台と、裏地専用のアイロンで身頃の
裏地をプレスし、最後に全体の細かなところをタッチアップで修正して
完成です。


11.そして、パンツのプレスですが、こちらも裏側から、裏地やポケット
の裏地などを伸ばし、シームの折り返しも開きます。そして表に返してク
リースラインを入れますが、これには専用のプレス機を使います。

プレスをすると、必ずサイドのシーム部分に当たりが出ますし、特にタキ
シードの両脇には側章があるため、厚みがあって当たりが強く出ます。
その当たりを取るために蒸気を使うと、当たりは取れても生地が波打つ
ため、細かく綿棒で水を付けながら乾熱で当たりを消していきます。

側章には元々少し波打ちがあったため、完全にフラットではありません
が、出来るだけ当たりの無い状態に仕上げてあります。


以上のような工程で心を込めて各分野の職人がタキシードとoさんのス
ーツを洗い、仕上げています。何かありましたらお気軽にご連絡下さい。
ありがとうございました。

                      技術主任 松村 誠


そして昨日、某社取締役のoさんより丁寧なお礼のメールが届きました。

その文章の中で、

先日会社で仕上がった品物を受け取りましたが、
あまりの仕上がりのキレイさに、社員一同、驚きを隠せませんでした。

いわゆるウェット加工などとは段違いにサラサラに仕上がっており、
ジャケットは袖を通したときの肌触りがドライクリーニングとは
全く違った快適さがありました。

裏地も一切、皺もなく、本当に美しい仕上がりで感動しました。
ナチュラルクリーン様の技術と心のこもった仕上げが伝わってきました。
弊社もこのような仕事をもっとしていかなければと強く感じました。


という内容で、「ジャケットは袖を通したときの肌触りがドライクリーニング
とは全く違った快適さがありました。」がうちのウォータークリーニングの
特徴なんです。そうじゃなく、素直に実感していることを伝えて下さること
が有難いですね。

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こういった鋭い感性を持った取締役の方がしっかり技術力やサービス力
を伸ばすための人づくりや場づくりを積極的に行っていけば、まさに「世
の為人の為」にまで発展していく会社になれると思います。

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ただ、そのためにはどれだけ現場を知って現場の人たちに、まず第一は
「働く喜び」、そして第二は「経済的喜び」を与えていけるのかだと思いま
す。普通、これが逆転していて「経済的喜び」、「儲け」ばかりが優先して
しまっていますと、クレームの改善はその場しのぎでなかなか改善できま
せん。

P1090033

多くの会社は社員のモチベーションを高めようと、いろいろなインセンティ
ブを与えようとしますが、そういうものは「金の切れ目が縁の切れ目」で、
やはり「働く喜び」「いい仕事をしようとするモチベーション」は、長続きしま
すし、人と会社の発展を生む。結果的に、会社にも社員にも、そして社会に
とっても、大きな成功や社会貢献へつながっていきます。

P1090035

経営の神様、松下幸之助さんは、
「いいものを生産し、多くの人地たちに満足するような価格で販売すれば、
商売は繁盛する。人情の機微に即した商売のやり方をすれば、お客さん
が大勢やってきてくれる。ごくごく当たり前のことをすれば、商売とか、経営
というものは、必ず成功するようになっておるんや」と、ごく当たり前のことを
素直に、誠実にやっていくことが成功の秘訣とおっしゃっています。


本当にその通りです。当たり前のことを継続して当たり前にやるほど実は
難しいことはない。こういった感性のある同業者の方たちと、切磋琢磨しな
がら伸び合っていければと、思っています。うちにとっては数少ないお付き
合いできる同業者の会社なので、良いご縁を育んでいきたいですね。

P1090036

生かしていただいて ありがとうございます。


06:25, Monday, Jun 08, 2015 ¦ 固定リンク ¦ コメント(1) ¦ コメントを書く ¦ トラックバック(0) ¦ 携帯

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本当に気持ちいいと楽しいし、なにより疲れません。
香りってすごい効果があるんだねえ、癒しと心の豊かさに。

名前: http://www.survetementpascherpc.fr ¦ 16:04, Wednesday, Jun 17, 2015 ×



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