⑴人間は変なプライドを捨ててアホになれば、
私たちは今よりも百倍は稼ぐことができるでしょう。
⑵他者への無理な道徳や礼節に縛られなければ、
人は自然と家族を大切にしながら、
他者との親睦を持てるでしょう。
⑶便利な文明や貨幣制度もなくしてしまえば、
そこに盗賊が存在することもありません。
以上の三つの文章では説明不足なので、
わかりやすく別の言い方をしましょう。
要は人間は、
⑷素直になり、
⑸純朴さを大切にして、
⑹自我(ワレヨシ)を少なくして、
⑺欲望を追い求めないことが大切なのです。
この老子の文章を読みまして、
その先見性・予言性に驚きました。
学者が訳しますと、⑶の突飛な文章が交ざることに
違和感を覚え、不自然さに困ることでしょう。
しかし⑶こそが、そのまま現代文明が
面している根本的な問題なのです。
便利な文明や貨幣制度のために
今でも戦争が発生して多くの人命が失われ、
子どもたちもゴミのように死んで逝っています。
いったい何のための文明であり、
金銭なのでしょうか?
それは人間の幸福のために存在するのでしょうが、
その結果は大量殺戮が現代でも起こっているのです。
老子が生きた二千五百年以上前でも
近隣国同士での国盗り合戦が絶えず、
街と文化がキレイに発展しますと、
それを奪うために他国が襲来することを繰り返したのです。
老子は多くの子どもたちの死体を見つめながら、
「いったい何のための文化だ。何のための富なのだ」と、
そもそもの原点のことを言いたかったのです。
そのために子どもや住民が死んでしまうならば、
もう富も文化も要らないと言いたかったのです。
そして人間は、後半の四つのことが
大切だと老子により示されています。
私が愛用する石鹸の生産地である
シリアのアレッポの近隣では、
今でも毎日のように女性や子どもたちが
戦禍のために死んで逝っています。
私は石鹸をさわるたびに同じ地球上でありながら、
その違いに思いを馳せます。
しかし、日本でも今の平和が
アタリマエだと思ってはいけません。
人類は老子が生きた二千数百年前と、
「まだ」何も変わらないようです。
老子が言われる⑷からに⑺を守りながら、
生活できることに感謝をして生きましょう。
「柔訳 老子の言葉」
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