たくさんの牛を飼う、
ある信仰者は言いました。
「私の妻は従順であり、
何でも私の言うことを聞きます。
妻は、色々な欲望に
ふらつくこともありません。
私と長い年月を共に暮らし、
ひたすら私を愛しており
美しい女性です。
彼女の行動で、
悪い噂を聞いたことがありません。
さあ神様、もし雨を降らせたいならば、
いつでも降らしていただいて結構です」
[原始仏典『スッタニパータ』
第一章第二節-二十二番]
釈尊は答えました。
「私の心は従順であり、
どんな他人の言葉も聞きます。
私の心は、すでにコノ世を解脱
(すべての執着から離れた
完全に自由な心境)しております。
長い年月にわたる
心の修行をしており、
私の心は常に静かです。
私が今さら、
悪行をすることは有り得ません。
さあ神様、もし雨を降らせたいならば、
いつでも降らしていただいて結構です」
「原始仏典『スッタニパータ』
第一章第二節-二十三番]
この牛を飼う信仰者の奥さんは、
何でも言うことを聞く、
従順で美しい女性だそうです。
男性は奥さんのことを、
まったく疑ってはいません。
心から信じ切っています。
この男性の生きがいの視点は、
自分の心にあるのではなくて、
他人である奥さんにあるようです。
でも、釈尊の視点は、
他人に依存することはなく、
自分自身の心にあるわけです。
自分の心は、自分自身を
裏切ることがありません。
この両者の心の拠りどころには、
根本的に大きな違いがあります。
もし、万が一にも、
男性が奥さんと喧嘩をしたり、
別離をしたとしますと、
男性の心はどうなるのでしょうか?
しかも神様を試すように、
まるで挑戦するかのように、
「さあ神様、もし雨を
降らせたいならば、いつでも
降らしていただいて結構です」
なんていう大口を叩いています。
このように、人間が
「他人に依存しながら」
「慢心することが」、
後から大きな悲劇を生みやすくなる
法則がコノ世にあります。
奥さんが従順であれば、
何でも無理な強要を
無意識にしていくのが人間のサガです。
家事の最中に、
男性の無理な言いつけで
用事の横入り。
しかも家事が途中のままならば、
後からそれも怒る。
奥さんの体調の悪い日も、
無理で身勝手な性交の強要。
その時の気分で、
男性は言うことがコロコロ変わる。
しかし、奥さんは
素直で従順であると
信じ切っている男性は、
「奥さんのフォローをすることもない」
わけです。
人間は、相手が異論や苦痛を言えば、
初めて相手の立場や自分と違う
視点も考えるものです。
必要で大切な相手と喧嘩をすれば、
その相手へのフォローや改善を
何とか考えるものです。
だからある意味で、
何の反抗も希望も言わずに従う相手とは、
これは恐ろしいことです。
おとなしく見える相手ほど、
何を溜め込んでいるのか?
は未知なのです。
自分にとって大切な人が、
素直であればあるほど、
余計にその相手への
「思いやりの行動と発言」が大切になります。
例えば、
*その言い返さない従順さは、
陰にいる別の優しい不倫関係の
男性の存在を完璧に隠すが故だった。
*奥さんが耐え続けたストレスが
原因でガンになり亡くなり、
男性は孤独な老後になる。
というパターンも、社会にあることです。
今の社会を見れば、
その後の二人の色々なパターンの
想像がつくことでしょう。
この項で大切な視点は、
*今の自分の幸福や自信とは、
他人の存在の御蔭で成り立つものか否か。
*釈尊のように、自分自身の心に
拠りどころを持つことが
コノ世での最終の答えであること。
この二点を知っておいてください。
このような視点を持って、
社会で思いっ切り生きることが
真の幸福への近道となります。
そして、周囲におとなしい素直な人がいれば、
その人への思いやりを余計に持ってあげましょう。
「柔訳 釈尊の教え 第一巻」
著：伊勢白山道より転載
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君津本店
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