天は「一つなる存在」を授かって
地球原初の混沌とした空が澄み渡り、
大地は「一つなる存在」を授かって安定し、
神は「一つなる存在」を授かって精霊となり、
渓谷は「一つなる存在」を授かって水で満たされ、
万物は「一つなる存在」を授かって誕生し、
王様たちは「一つなる存在」を授かって、
天下を治める立場になりました。
コノ世のすべてを生じさせるのは、
「一つなる存在」なのです。
名誉を数多く得るための行動をしますと、
逆に真にほめられることはないでしょう。
美しい宝石のように自分がなろうとは欲せずに、
ありふれた普通の石でありなさい。
つまりは、美しい宝石や普通の石などと、
区別する意識を自分自身が持とうとはせずに、
ただ「一つなる存在」を
自分がすでに持つことに気づくことが
コノ世のすべてなのです。
一つなる存在=根源的な存在」と言えます。
その大いなる「一つなる存在」は
私たち全員にも宿っています。
だから、人間は何を比較したり、
悩んだり、苦悩したり、
自分を卑下する必要があろうか?
と老子は言うのです。
人間が気づくべき最も大切なことは、
自分自身に内在する
「大いなる一つの存在」です。
これを人間は、
誰もが最初は自分の外部に探し始めるのです。
しかし、いつまで経っても
「わからない」「安心⋯⋯という
長い人生の旅をします。
人間は死ぬまでに、
自分に内在する「一つなる存在」に気づければ、
それが人生の大きなゴールなのです。
そしてさらに大切なことは、
「一つなる存在」を授かって
終わりではないのです。
それをどう自分が「生かしたか?」により、
運命が決まるのです。
自分が授かった「一つなる存在」を、
生かし切る、大切に育てる意識を持つことが、
自分自身が大いに生かされる幸運につながります。
これは人生の大切なエッセンスです。
これを知るだけでも、人生は変わります。
「柔訳 老子の言葉 写真集」
著:谷川 太一より抜粋転載
・・・・・・・・・・・・・・