世の人々はだんだんと裕福になっていきますが、
私だけがいつまでも独りであり貧乏になっていくようです。
私の心は混沌として、まさに愚か者のようです。
世の人々はキラキラと輝いて見えますが、
私独りだけは悶々と暗いのです。
世の人々はテキパキと動いていますが、
私独りだけはノロノロとしています。
私は、あてどなく大海に漂い、
海の凪のように進歩がありません。
世の人々は全員が役に立つ仕事を持っていますが、
私だけ独りで牢屋にいる役立たずのようです。
しかし、私独りだけが他者とは異なり、
大いなる大自然の母性に生かされていることを知っており、
これに感謝をしています。
最後の一文が、
老子が真の聖人であることを示しています。
生きて肉体を持つ間は、
老子も含めて人間全員の違いはないのです。
しかし老子は、大いなる母性(真理、神)に
「食」わしてもらって生かされていることに感謝(貴ぶ)をすることが、
他者との大違いだと言っています。
逆に言いますと、
コノ世で成功しようが金持ちになろうが贅沢な生活を楽しもうが、
大自然(道)の母性を尊ばない人間はダメだともいうことです。
さらに言えば、その人生に何があろうが、
大自然の母性に感謝できる人間は、
すべてがOKなのだとも老子が保証しています。
「柔訳 老子の言葉 写真集」
著:谷川 太一より抜粋転載
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