老子は後世の評価で、
不老長寿・長生きの達人、
偉大な仙人として解釈されることがあります。
この章では、
他人に強制や強要することを嫌がる老子が、
修行のエッセンスをさりげなく披露しています。
ここで重要なことは、
老子が最初に大自然への信仰について
触れていることです。
これが最重要だということです。
それは個人崇拝などの小さな対象ではなくて、
①「人間は、コノ世に生まれたからには、
人間が生み出した、送り出した、コノ世を出現させた、
大いなる存在(母親)のことを常に思い、
感謝して、大切にすることが重要だ」
と老子が言っているように読み取れます。
このような思いを持つことが、
その人間を安全に・安心に守ると示唆しています。
考えてみましても、
私たちが存在していることほどの不可思議は、
コノ世にないのです。
私たちは、自分たちが存在して暮らしていることが
アタリマエであり、
そのことを不思議に思うことがありません。
そして、目先の細事に命を削るようにして苦悩しています。
しかし、どんなに科学が進歩しましても、
地球のミニチュアを一個でも再現することができていません。
そこで命が生まれて「循環」するというモデルを
人間は再現ができないのです。
大いなる母親のことを少しでも理解できれば、
真の自分自身のことも自動的に
知ることになるという真理が存在しています。
次に、人間にとって重要なことは、
②「五感の感覚にダマされるな。
五感の欲望に囚われるな」
と老子は示唆しています。
人間は五感に頼る限りは、
永遠に不安は収まらないということです。
なぜそう言えるかの根拠は、
人間は快楽の対象も内容も
コロコロと変わっていくからです。
そして、最後には飽きて枯れることもあるからです。
こんな不安定なモノを追い求める限り、
そこに幸福や安定がないのは明らかなのです。
そのために家族を捨てたり、
幼い命を殺したり、
何かを犠牲にするほどの価値も意味も存在しないのです。
自分が実際に見聞きする刺激よりも、
「ナントナク」という第六感を大切にしましょう。
そして、生かされていることに
感謝をすることが最重要なのです。
そして、
③「絶えず小さなことにも気づける配慮を持ちなさい」
他人にも、小さな思いやりと配慮を持つように。
④「心も身体も、絶えず柔軟な姿勢でいなさい。
それで臨みなさい」
⑤この四つを実践した上で起こる、
「自然な流れに従いましょう」
このように人間が生きる最善の道を、
老子が示唆してくれていると感じます。
みなさまの人生と生活の参考になれば幸いです。
「柔訳 老子の言葉」
著:谷川太一より抜粋転載
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