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2019年11月6日

「80年前の麻のペンケース」11/6(水)
「80年前に母が麻で作った手作りのペンケースを奇麗に復元して欲しい」
というご要望です。


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 全体が、80年の時の流れの中で、生地が酸化され自然の成り行の薄茶色に
変色しています。
シリコーンドライの手洗いでざっくり全体の薄汚れは除去できますが、見た目の
美しさの体感度は20%程度です。


 思い切って水洗いしたいのですが、刺繍の色がにじむ可能性が多分にあり、
その色が生地に滲み出た場合は、アウトです。
全部解いてもう一度仕立て直すのが一番ベストなのですが、そうすると、
思いを込めて、針を使って一針、一針、心を込めてお母様が縫い上げた思い
が、無くなってしまいます。


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 従って、とても手間と根気のかかる祖業ですが、模様の周りを一センチずつ、
染み抜き、部分漂白しながら、進んでいくというとても細かく忍耐のいる染み
抜き作業を行っていきました。
 最後に、色合わせ、染色補正で80%は奇麗になりました。


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また、口止めスナップの所の緑青の錆は90%綺麗さを戻しました。
 とにかく80年経過した麻の生地を傷めないように最大限の注意を払った
復元作業です。
その点よろしくご理解下さいませ。


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 なんとか解かないで、ここまで心を込めて精一杯させていただきました。
ありがとうございました。


うちの修復職人の日名川茂が手掛けた作品です。


お母様の思いを第一にしてほどかずに修復復元するという真摯な姿勢に
心より拍手を送ります。


●80年前のペンケースのS様ご夫婦が店頭にお越しになり、美しい仕上がり
に制作されたお母様が喜んでいらっしゃると涙ぐまれ懐かしさを感じられて
いるととても喜ばれていらっしゃいました。

世の中にはさまざまな仕事があります。
すごく派手で、目立つ仕事もあれば、人目につかないようなこのように地味な
修復の作業の仕事もあります。

ただ、実は影ではどれもが泥臭いとても根気のいる仕事です。
ですが、全ての仕事はとても大切で素晴らしい。
職人が与えられた品物の心を読み取り、その心を新たに形にしていく、
卓越した技術による素晴らしい仕事に注目していただいて
ただただ感謝です。

18:04, Wednesday, Nov 06, 2019 ¦ ¦ コメント(0)


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