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2019年 3月20日

「楽しかった整形仕上げ技術者講習会」3/20(水)
 「30代になって、仕事を続けてきた証が欲しいと思い、
『技能検定』1級の資格を取得しました。
さらに、50代になってから特級・1級技能士が技能を競い合う
『技能グランプリ』にも挑戦。3位、2位と積み重ねて5回目の
挑戦でようやく1位になり、このチャレンジが仕事に対するやり
がいをより高めてくれました」。


 紳士服注文仕立職人として、2009年に「現代の名工」を受賞
した鈴木誠二さんは、おだやかな口調で言葉を続ける。
 「父がテーラーを経営していて、父の方針で定時制高校に通
いながら15歳でこの世界に入りました。
 内心では強制的に決められたことに対する反発もありました
が、親に逆らうという考えは初めからない時代でした。縫製の
仕事は早始めた方が早く上達するという考えで、中学卒業と同
時に、私にやらせたのだと思います。ところが働き始めて1年後、
父が脳梗塞で倒れてしまいました。姉や職人はいましたが、営
業から縫製まで、私がやらなくてはいけない状況になってしまっ
たのです。
 幸い、父は1年後に復帰できましたが、10代でフルオーダーメ
イドのすべての仕事を経験できたことは、大きな財産になったと
思います」。


 1960年代に全盛期を迎えたオーダーメイドは、1980年代初頭か
ら下火となり、現在の不況下ではかなり厳しい状況にある。
 「オーダーメイドスーツを作るすべての工程を一人で行っていま
す。そのため、仕立てることができるスーツはひと月に4〜5着ほ
ど。従業員を雇わないと対応できません。オーダーメイドスーツは、
お客様に合った生地やデザイン選びから始まり、採寸、製図、裁
断、仮縫い、補正、縫製といった工程で作り上げていきます。
私はお客様一人ひとりに対して、世界で一着しかないスーツを作る
この仕事に誇りを持っています。ですから、今この業界が低迷して
いる中でも、充実した気持ちで仕事と向き合っていられるのです。
近年、オーダーメイドの服は手縫縫製と、工場縫製に二極化されて
います。ビジネススーツに関しては、工場縫製がシェアを占めていま
す。このような状況で手縫いの洋服作りを続けていくには、新規の顧
客獲得も重要ですが、今のお客様のご用命を一番とし、末永くお得意
様としてお付き合いさせていただくことが大切だと考えています」。


 鈴木さんは、「お客様との関係性」に重きをおいているが、業界の将
来を見据えて、後進の育成にも非常に熱心に取り組んでいる。その一
つが、業界の先人より継承されてきた洋服作りの手法を、“勘”と“こつ”と
いう抽象的なものだけで伝えるのではなく、具体的に数値などを交鈴木
さんの講義は、明確に数値化された図面を使って行われる。
製作中の歌手のステージ衣装。チャコマーキングを使って型紙を生地に
写す。


 「洋服作りではお客様に合った適正な型紙を製図することが美しく着
心地の良い服への第一歩で、その製図には、正確な数値が必要です」。


 15年ほど前から始めた講習会では、袖ぐり(アームホール)と袖の関
係を長年の経験をもとに分析して数値化した。“大体これくらい”と言わ
れていたものや、いわゆる職人の“勘”と“こつ”を受講者に分かりやす
いように表にしたのだ。これにより、誰にでも、腕が動かしやすく袖のラ
インも美しい、また肩周りにも適度な余裕を持ったシルエットの美しさと
着心地の良さを両立させた洋服の型紙の作成を実現した。


 今の若い人の感性は豊かだがそれを表現する技術が大切講習会で
は注文服業界を目指す若い人たちにも技術指導を行っている。
「最近は、注文服の技術・技能を教える学校がほとんどないという状況
です。そのため、逆に手縫いを勉強したいという若い人が増えています。
今の若い人は、感性が豊かで知識も豊富です。ただ、手縫いの技術を
学ぶ場所がない。注文服業界にとっても職人を養成する場がないこと
は危機的な状況です。


 現在、同業の仲間とともに、注文服縫製に関心のある方のために手
縫いを教える環境作りに職人の使命として取り組んでいます。手縫縫製
のスーツが縫えるようになるには、7〜8年の経験を要します。職人とし
て身を立てることが困難な時代ではありますが、若い人にもぜひとも挑
戦していただきたい」。

 
 最後に、あらためてこの仕事に対する鈴木さんの思いを伺った。
「オーダーメイドスーツ職人には定年がない。これは魅力です。自分次
第で生涯現役なのですから。そして、お客様に自分が縫製した洋服を
納品したときに、着心地が良いとご満足いただき永く愛用してくださる
ことがものづくりの最高の喜びであり、この仕事を続けてきて良かった
と思える瞬間です。


 昨年10月の『園遊会』に招待していただいたのも一生の記念になり
ました。これも一重に永くお付き合いいただいているお客様や共に日
々切磋琢磨し合っている同業者の皆さまのお陰と感謝し、これからも
業界の発展と技術向上のために日々努力していきたいと思っています。
                                
               「ニッポンの匠」より転載


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午前10時から午後4時まで6時間という長時間に及ぶ研修、
ありがとうございました。
アイロンを握ったことがない超初級レベルから、イセコミ、
クセ取りといった上級レベルまで、時間を区切ってのテーマ
別講習会の内容は盛り沢山で、技術以外にもプレスを楽しむ
プレスが好きになるというカリキュラムや流れの作り方に、と
ても勉強になったところが多く、とても充実した時間の一日
でした。

ただ、鈴木先生のプレス技術や理論を聞くたびに、私自身
不明確となっている点が多いと気づきました。また基本がで
きていないということも痛感しました。洋服づくりや整形仕上
げは奥が深く、短時間で身に付けることはできない、コツコツ
と日々の努力と学習を積み重ねていきます。

代表から最後に「月一度4時間の講習で3年間をかけてスー
ツのパターンと整形仕上げを学ぶプログラムを4月からスタ
―トさせるぞ」というお話があり、とてもワクワクしています。
どこから勉強していいのか分からなかったので、鈴木先生
のような一流のプロの方からスーツのパターンや縫製技術、
そして整形仕上げ技術を直接学ばせていただけるのは本当
にありがたいです。

学習を重ね、より多くのお客様に喜んでいただける仕事が
きたら最高です。まだまだ力不足ですが、微力ながら努力
してきた結果が現われてきたのか、スーツの宅配やスーツ好
きのお客様たちの来店が多くなりました本当にありがたいです。
そういうお客様の期待に応えるためにも、是非今以上努力して
頑張りたいです。
今後ともご指導の程、宜しくお願いいたします。
                          鈴木 尚学

※今日の6時間にもおよぶ講義がすべて終了して、事務所
に飾ってあるディトーズのテーラー&カッターである水落さん
の作られたジャケットをしけ゛しげと眺めながら、「素晴らしい
テーラーさんですね、この作りは。若い人たちがよく活躍され
ておられます。嬉しいです。一度お会いしてこういう方からも
学びたいですね」とおっしゃってました。

70を過ぎたニッポンの匠、現代の名工と言われる人が、ポロ
っとそんなことを平気でおっしゃる。
実るほど首を垂れる稲穂かな。本当に謙虚で人間性の高い
超一流の職人さんだと、あらためて実感させていただきました。
これから3年間しっかり技術もそうですが、人間的な豊かさを
学んでまいります。

そして鈴木先生もテーラーとして生涯現役とおっしゃっていまし
たが、私たちもクリーニング道として生涯現役を目指していき
ます。ワクワクで。

15:39, Wednesday, Mar 20, 2019 ¦ ¦ コメント(0)


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